テンセンス株式会社 代表取締役 林真知子 様

<経歴>20歳で音楽事務所に就職。結婚・出産を機に仕事を辞めるが、30歳になってからアナウンサーを目指し、アナウンサーになる。2年後には、フリーアナウンサーに転向。40歳過ぎに旦那さんと老後のためにとcaféを始める。アナウンサーとしての仕事はしっかりあったもののカフェの経営が忙しくなったため、アナウンサーの仕事を辞め、テンセンス株式会社の代表取締役になる。

社名の由来は、旦那さんの五感(5sence)と自分の五感(5sence)を合わせて10sence(テンセンス)

―エコプレッソを始めたきっかけは何ですか?

まず、2012年にこのR・J CAFEをオープンしたんです。「今(2012年)から始めれば、老後には地域に根付いたカフェになってるかな~」と、最初は軽い気持ちで老後のために始めましたね。このカフェは、エスプレッソに特化したお店だったんですが、なかなか売れなくて、売れる工夫をずっとしていました。他店で、ケーキやパンケーキ、クッキーを売っているように何かないかと試行錯誤してました。4年後の2016年ですね、エスプレッソのカップをクッキーにするのはどうだろうと思い、お客さんにお出ししたんです。すると、春に出し始めたんですが、その年の秋頃から、お店が満席になって、行列ができるようになったんですよ。「どこで見たんですか」とお客さんに聞いてみると、「ブログで見ました」ということだったんです。

 

―エコプレッソの発想はどこから来たんですか?

よく聞かれるんですけど、本当にそれはクッキーやパンをコーヒーに浸して食べたりするお客さんがいるじゃないですか、そういう流れの中で、「もしかしたらクッキーのカップを作ったら面白いかな」そんな発想からですね。その頃は、実はエコとは無縁で。エコという言葉自体は知っていましたけど、実践するというほどではなかったですね。

 

―コーヒーをクッキーの容器に入れるのに工夫はしましたか?

初めは、プリンの型でカップを作っていたんです。そうすると、やっぱりアイシングで付けていたので取っ手が取やすく、あと食べにくかったり、漏れやすかったですね。でも、「漏れてるわ」とか「こんなん全然おいしくないわ」よりも、「食べてみたい」「写真を撮ってみたい」と興味を持ってくださるお客さんが多かったですね。だからこそ、わたしたちもそれを踏まえて改良に改良を重ねていきました。

 

―お客さんがいたから作ろうと思ったんですか?

そうですね、これが1日1個とかしか売れなかったら、もしかしたらやめていたかもしれないけど、それを目当てにやってくるお客さんがいたから、頑張ってお渡ししようと思いましたね。1日100個は作ろうと、23:00までのお店を21:00に閉めて、残りの2時間でみんなで作りましたね。100個でも売り切れてしまうことも多くなって、怒って帰ってしまうんですよ。それで、もっと多く作るために機械が必要だということになり、2017年に国の“ものづくり補助金”に申請してみたんです。そうしたら、運よく採択されて、カップと取っ手を一体に作れる機械を作ったんです。

 

―量産化に繋がったことはありますか。

初めは、大手の企業さんに持っていっても、1日200~300個では少なすぎると断られてたんです。だけど、2017年にコーヒーに特化したイベントとしてはアジア最大の国際見本市であるSCAJコーヒーの展示会に参加したところ、大手の企業さんが興味を持ってくださって、販売先を全国に広げられたんです。ここまでに、多くの苦労がありましたね。なんせ今まで何か者を売ったことが無い上に、可食容器が初だったから、いろんな人にどうしているのかということを聞いて回ってましたね。自分がパイオニアだから、人の話を聞くものの完全にまねできるわけではなく、かなりきつかったですね。実は、成分表示とか検査のことも知らなかったんですよ。

 

―エコプレッソが広まったきっかけは何だと思いますか?

時は2017年、インスタ映えが流行語大賞だったんですよ。インスタやブログで写真が広まって、可愛い容器として人気に火が付いたんです。あとは、カップに入れるのをエスプレッソだけでなく、コーヒーや紅茶もいれはじめたんです。中のアイシングをイチゴ味やバナナ味、を変えてみたら、お子さんでも飲めるようになって、それで色んな方に親しまれるようになった気がします。あとは、ECOPRESSOのロゴを卸先のお店屋さんや企業の名前を入れたり、柄を変えられるようにすると“あなたのお店のオンリーワン”という感じで宣伝として人気になったんです。企業さんがサステナブルの面を押し出せるという意味が大きかったと思います。何年前だったかな、あるアパレル会社が春のファッションショーで使用してくださったんです。外資系のアパレル会社は、廃棄処分に関して前向きに捉えられてて、その点「サステナブルな生地を使っていますよ」という一つのアクションとして使ってくださいました。

 

―初めは意識していなかったエコに気づいたきっかけは?

2019年、海外にも輸出したいと思ってアメリカに行くんですよ。そこで「こちらが日本で可愛いカップとして流行っているカップです」とプレゼンすると、まさかの返答は「あなたはなんて環境に良いことをしてるんだ」。「いやいや。これは、可愛いんですよ。インスタ映えなんですよ。日本では」と言い張っても、「いえいえ、これはほんとによく考えられてるね」と言われたんです。そこで初めて、エコだということに気が付きましたね。海外でも広がるように、価格面の調整とあと、グルテンフリーのタイプを作り始めましたね。日本とアメリカの考え方のギャップがあったのはもちろんなんだけど、アメリカのエコってとってもカラフルでおしゃれなんですよ。しかも、押し付けではなく、みんなが当たり前に生活をしてて、なんか楽しくておしゃれだったんです。

 

―サスティナブルなことは他にもされてるんですか?

エコプレッソを買ってくれているお店の方々とチーム・エコプレッソを作ったのと、エコプレッソ基金を作りました。この基金はエコプレッソの売り上げの一部を寄付することを公言して、実際に初めは、プラスチックフリージャパンさんに寄付させていただいたんです。あとは、古民家を改装して昔ながらの暮らしを再現しようと思ってるんです。庭の一面に苔を植えたりしてます。それで、外国人に紹介出来たらなって思ってるんですよ。やっぱり、昔ながらの家って過ごしやすいんですよ。便利になりすぎた故に、伝統がどこかで途絶えてしまったと思うんですよね。

 

―男社会の中で社長というのは大変ではなかったですか?

負けたくないという気持ちが大きかったと思うね。振り返ってみると、特に5人兄妹の末っ子だったからっていうのもあって、お兄ちゃんたちに負けたくないって思ってたかもしれないね。男だから女だからっていう区別は嫌いだね。あとは、もともと社長になりたかったって思ってたから、アナウンサー時代も2年でフリーに転向しましたし。誰でもない自分で勝負したかったっていう感じかな。

 

―こんな方と仕事したいっていうのはありますか?

同じ目標に向かってくれる人かな。あとは、自分のやっていることを応援してくれる人。そういう人たちと話していると、話が尽きないんだよ。好きなことを話していると、自然と色んなアイデアが出てくるから、同じ目標に向かっていることは大事かな。

 

―学生に一言お願いします。

楽しみながらやることが一番。あとは、何か選択肢が与えられた時には、自分がかっこいいと思った方を選ぶことが大事かな。人からアドバイスを聞くのも大事だけど、結局は自分がどうしたいかの話だから。何も目標が無ければ、いろんなことに挑戦することは大事だね。今やっていることが将来、どんな形で関わるかも分からないし、何かに繋がるかもしれないからね。

エコプレッソのマグカップ

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